書いている人:中村慎太郎
おはようございます。
本を作る会社として株式会社西葛西出版を創業してもうすぐ2年が経ちます。
2年もやっているのに刊行点数はまだ2点です。出版社としての機能不全だと言われてしまうかもしれませんが、これでも一生懸命書籍の企画をしているし、何より楽しくやっていけているとは思います。
地獄のような資金繰りに毎月ヒリヒリしていますが、それも既に慣れました。最初は本当に眠れなくなるほどキツかったのですが、開き直って何とかしのぐ癖がつきました。
特に昨年10月に事案があって以降、企画は複数潰れました。一方で、人件費が大幅に軽減されたことで、会社が存続できる目処が付きました。また、その時にとてもよく人が見えました。
生涯かけて付き合うべき人というのは厳しいときも寄り添ってくれて、そうではない人は何らかの機会に去っていきます。
大切なのは信念です。
以下のような欲望を抱いて仕事をしてはいけません。
人に愛されたい、好かれたい、お金が欲しい、出世がしたい、影響力が持ちたい、こういった欲望です。
もちろん、目先の目標として、売上を作ったり、賞を取ったりすることを目指すのは悪いことではありません。しかし、それだけでは駄目です。どうしても本を出すという巨大な成果までは届きません。
大切なのは信念です。
私が西葛西出版を作ろうと思ったのは、お金を稼ぎたいからではありません。実は、お金を稼ぐための起業プランもありました。起業のアイデアを練っていたのは、コロナ禍に苦しむ東京、タクシーの運転席でした。
銀座1号の乗り場へと向かう築地側タクシープールにショットガンの弾として待機していたときでした。
説明は割愛します。気になる方は、下記アドレスより「タクシー乗務員の皆さまへ」というところをご参照ください。
それは、清掃業であったり、学業系のコンサルティングであったり、IT業であったり、ライティングプロダクションであったり……。色々考えました。
そんな中で出版業を選んだ理由が2つあります。
1つには、私がこれまでやってきたライティングおよび編集という技能が活かせるため。これらは得意なだけでなく、好きなことでもあるため、高いモチベーションでやっていけるだろうと考えました。
もう1つは、自分が思う意義があるものを書籍という形にして、現世に残していきたいからです。
ウェブコンテンツは流れて消えていきます。大バズを記録したコンテンツであっても5年後には記憶から消えていきます。検索エンジンでも見つけづらくなりますし、バラバラに切り刻まれてAIに取り込まれてしまうかもしれません。
一方で本はというと……。
大学の図書館で、50年以上前に出版されたボロボロの書籍を調べたことがある人も多いと思います。
本に残すというのは価値のあることで、国会図書館をはじめとした図書館に収蔵されることから、未来へと知的資産を繋ぐことができます。
また現代においても、一定以上のコストをかけて出版していることから、ある種の権威付けがなされます。また、紙に印刷することで、物体としてこの世に存在したものになります。
この「物体として存在している」というのがキーになると踏んだのですが、最近はショート動画投稿サイトであるTIKTOKにおいて、書籍が売れ続けているとのことです。BOOKTOKというタグ付けがされているとのことですが、どうして本が売れるのかというと「物体になっているのがエモい」のだそうです。
ショート動画と書籍に親和性があるというまさかの展開ですが、これは本というメディアに、潜在的な、疑いえない価値があるからです。
私は紙の書籍も、電子書籍も出版していますが、それによる世間の反応はまるで違います。よくも悪くも紙の本には権威があります。言い換えると信頼があります。
だからこそ、出版社は、その信頼に応えられるだけのものを作る責任があります。
日本で最も危うい出版社である我々が言うのははばかられますが、敢えて言わせていただくと、不況に悩む出版業界は、10年、20年先であっても、あるいは100年、200年先であっても、読まれ続ける価値のあるコンテンツを作る余裕がなくなっているように思います。
もちろん、志が高い出版社もあります。私が、『サポーターをめぐる冒険』を出版させていただいた、赤羽の小さな出版社である“ころから”さんもそうだと思っていますし、トランスビュー取次代行を利用しているリトルプレスには面白い会社が多いです。
イベントに何度か出演させていただいたゲンロンさんもそうです。
偉そうなことを言ってきましたが、お許し下さい。高い志を持つということは、現体制に不満を持ち、それを解消するための努力をし続けているということです。批判されるのを覚悟で胸を張っていきたいと思います。
今取り組んでいるのは、私が著者となる『君がJリーグを認めるまで、僕は歩くのをやめない』です。
まずはこの本を全力で作ります。年間に2〜3点、続刊を出していけるようになれば刊行点数をある程度確保できるようになります。その上で、他の著者の書籍も作れるよう進めて行きたいと思います。
細々とやっている西葛西出版のYoutubeで、ライターの話をしました。
あまりの暑さに、暑さ対策を25個考えました。最後の1つがなかなか冷えます。こちらは音声のみです。